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情報代謝

情報代謝


基本的な概念 

情報代謝のモデルは、最初にケピンスキー(1970)によって発表され、彼を含む複数の人物によってさらに発展した。ケピンスキーは、機械的なモデルが人間に二元的な特性化を強いているため、精神プロセスは細胞プロセスを機構的に管理し、経験や創造性などの心理的生活については殆ど説明しないと主張した。彼が生物学的モデルを機械的なモデルよりも心理的現実に近いと見なしたのは、それらが生命を考慮に入れているためである。

ケピンスキー(1970、1979a)は、「エネルギー情報代謝」という用語を使用して、生命、より具体的には、それなしでは生命が存在し得ない2つのプロセスを提示した。系統発生の初期段階ではエネルギー代謝が支配的だが、それは常に、例えば栄養源に関する情報処理などの情報代謝と共存する。成長が進むにつれて、情報代謝は重要性を増し、極端な状況では、利用可能な全エネルギーが情報処理に利用される。情報代謝モデルは、細胞の構造組織との類似性に基づいており、エネルギー代謝のアナロジーから情報処理の説明を試みる。ケピンスキー(1970)によると、「情報の代謝」(つまり、情報処理)は細胞のように機能する。つまり、細胞膜に類似した独自の境界線、細胞核に類似したコントロール・センター、小胞体やリソソームに類似した情報の配信および処理システム、そして、ミトコンドリアに類似したエネルギー源を有す。理論の基礎には、他の情報処理に関する理論で認められているように、時間と共に変化する情報入力の必要性がある。ケピンスキーの見解は、カルノーの定理の一般化に基づいており、「生物はオープンシステムであり、それぞれ生命保護と種の保存の法則によって描写されたプロセスの結果として、ネゲントロピーが増大または減少する」(Struzik、1987a、p.107)と述べている。これらが、ケピンスキーによって認識された2つの主要な生物法である。また、彼はそのような代謝の2段階を記述する。第1段階は殆ど完全に不随意であり、脳の下部(間脳と嗅脳)に限局され、環境の何らかの側面に「向かう」または「対立する」基本的な態度を確立する。第2段階は自発的であり、新皮質に限局されており、環境と関連した活発な行動の原因である。

コントロールセンター

情報代謝は、定義された空間と時間内で発生する。コントロールセンター(CC)-つまり、自我または「私」-および、機能構造は情報の受信、処理、および同化に加えて、生物自身の活動制御を可能にする。情報代謝は、生物が辿った系統発生と個体発生によって決定されるが、将来に及ぶ目的の追求も関与している。それは、外界の多様な実態(つまり、機能構造)を個別に生成する。これは客観的には均一だが、個体ごとに独自で異なるものとして認識される。

機能構造

「機能構造」という用語は、知覚と活動の略式表現として、ケピンスキーによって使用される。

価値体系

意思決定は、人生における基本的機能の1つとして認識されている。これは生物によって異なる自由度を有す。最も原始的な生物では制限があり、人間には最大限の自由がある。価値階層は、特定の意思決定レベルに至る情報を選択、およびろ過する構造を管理する。この価値体系には3段階ある(ケピンスキー、1977b)。

1.第一段階は生物学的であり、生物学的プログラムの概念によって記述されるあらゆるもの(つまり、全ての人間が持って生まれて、ある程度まで制御できるもの)に関係している。これは2つの基本的な生物学的法則、自己と種の保存によって決定される。それらがどの程度うまく確立されているかに応じて、多かれ少なかれ個人の生活の動態について話すことができる。

2.第二段階は、感情的な態度(つまり、「~の方に」または「に逆らって」)を決定する。これは、個人の感情的な関係が環境にもたらす、情動的な軸である複合体の形成によって特徴付けられる。通常、これらの軸は幼少期に重要な人物を中心に形成され、その後の人生における人の感情的な関係に影響を与える。また、複合体はトラウマ的な状況に関連して発生することがあり、以降の人生において発生する同様の状況に対する、個人の態度を形成する可能性がある。複合体は反復によって定着する。生物学的段階と感情的段階は、意識の閾値下にある。つまり、それらは自動的なものである。それらは、固定された自動的な傾向、習慣、および態度に基づいて、「真の価値階層」(「私は本当にこうである」)を形成する。

3.第三段階は社会文化的レベルであり、個人がどのように将来に取り組むかを決定する(「私はこうなりたい、これらは私の目標である、これが私にとって最も重要だ」)。この段階は意識的であり、個人の願望、理想、および文化モデルで構成されている。これは自身が身を置く社会環境の価値階層を指す。

意思決定のプロセスにおいては真の価値階層が重要度を増すが、最終的な決定は、理想的な階層を含む価値体系の全段階によって定まる。したがって、個人の意思は、自身の行動をある程度まで制御することができる。

秩序の管理

「秩序は構造の本質である。エネルギー代謝における構造と秩序の維持は、生理学的メカニズムによって処理されるため、努力(少なくとも意識的な努力)を要さない。情報代謝におけるこれらの維持は、生物の外部および内部から得た情報の適切な選択、また反応の適切な形態を選択することに焦点を当てた、継続的な努力と関連している。この統合に対する取り組みは、主に無意識で起こる。しかし、我々の意識に到達する要素は、矛盾した感情、アイデア、計画、世界観や人間観などの混乱に、秩序を保つために必要な取り組みを実現するのに十分である。意志を伴った行為において具体化する場合、統合の取り組みは意識的である。情報代謝は、外界からもたらされる圧迫感として、主観的に経験される。これを人間が多かれ少なかれ緊張下で整理して配置しようと試みることで、人間の経験世界は常に主題と色を変える」(ケピンスキー、1979a、p.191)また内界からは、受容器と人間自身の精神活動から発信される信号で構成される:夢、計画、記憶、幻想、思考など。

自動的な精神活動

空想は人間自身の精神活動における最良の例である。「空想は、ほとんどが『私のもの』である。現実に対する力はないが、自己に対しては絶対的な力を有す。人はそのために戦うことがあり、交互に勝利したり敗北する。拡張の可能性が弱まり、自分の存在領域に対する制限が増すほど、より豊かで非現実的な夢が生じる。しかし、意識のある状態においては、自身の空想に対する許容性には何らかの限界がある」「空想が現実離れしすぎると、つまり、現実世界の構造に収まらなくなると、奇妙で​​驚異的、危険で滑稽なものになる。白昼夢の世界は現実の圧力下で縮小される。非現実的なものは枠外に追いやられたり、意識から完全に消滅する…しかし、現実世界の構造に適合しないものが、夜間の夢想において発生する。空想(…)は、睡眠中の思考、計画、夢想と同じ経験領域に属す。現実世界の構造における制限的な影響は、最初の2つの現象では非常に強く、3番目の現象では極めて弱くなる。この自由は空想において遥かに重要である。これは夢の世界において独立した統治者である。睡眠中、状況は逆転する。そこに存在する現実が空想の形や内容に殆ど影響を与えないことは確かだが、同時に、人の力はそれらに及ばない。それどころか、人は自分の空想の権勢内に留まり、そこから意志を伴う断固とした行動を喚起することによってのみ、自身を解放することが可能となる」(ケピンスキー、1979b、pp.179-181)。

生命体と環境間のフィードバック、および現実感覚

情報代謝を支配する法則の1つは、周囲の世界は変化しやすく、生物は安定していることである(ケピンスキー、1979a)。環境との信号交換の構造が変化すると、不安を伴う指向反射が引き起こされる。外部刺激に対する成長的および感情的な反応の力は、刺激の強度と異変性、および現在の意識状態に依存する。信号システムの選択能力が低い状態(例:睡眠中)にある場合、反応は極めて強く、状況に応じて変化する価値尺度として示され、ある組み合わせの信号が別の組み合わせよりも生物に届きやすくなる。

人間の神経系に関する機能の総合的な統合度は、意識の状態、例えば環境に対する意識的な反応に比例する。周囲の世界との接触が途絶えると、この統合プロセスは緩和される。現実感覚は、人間の環境との感覚的な接触にそのまま依存している。人間の現実感覚には、多くの習慣と信念が含まれる。人が新しく独自の状況に直面した場合、過度に肯定的・否定的な感情を経験した場合、または長期間、行動が周囲の世界や自身に対する否定的な感情的態度に影響された場合、その秩序は乱される。そのような感情的状態の単調さは、人生を曖昧で、味気なく、退屈なものにし、その現実は不鮮明になる。睡眠中における現実は夢想的な幻で構成されているが、意識状態においては周囲の世界によって構成されている。睡眠と覚醒の境界に思いを巡らせると、疑問が生じる。覚醒状態では、人間は周囲と強いフィードバック関係にある。外受容性刺激の知覚閾値は低く、内受容性刺激の知覚閾値は高い。一方、睡眠中は周囲とのフィードバック関係が弱まる。睡眠と覚醒のリズムは、外的および内的刺激に対する反応性の変化と考えることが可能であり、人間と環境の関係を変化させる。

情報代謝のモデル

情報代謝のメタファーが表現しているのは、人間の経験および行動は情報処理の技術モデルでは説明できないという命題である。人間に生じるこのプロセスは、個人の人生史の中で形成された、情報の主観的な意味から多大な影響を受ける。価値体系の機能構造に含まれる独自の経験は、特に感情レベルにおいて、主観的な感情の複合体を含有する。これらの複合体は、ある状況における人間の行動を、客観的な論理ではなく、主観的な感情によって方向付ける。このため、人間に情報代謝の概念を適用することは、情報処理の概念よりも適切だと思われる。ケピンスキーによって情報代謝に適用されたモデルは、本質的に生体細胞の構造と機能に類似しており、人間としての経験構造における主要素を区別することを可能にする。これらを図2.1に示す。

1.中心点ー「私」、またはコントロールセンター(図では「CC」)。この構造は、自身の精神活動の主体である普遍的な経験に対応しており、生物の細胞活動を支配する核のように、自分の活動全体を制御する。

2.境界(図では円柱全体)は、自己同一性の意味で捉えられ、自身の境界を識別し、他の人々や外界から自己を区別する手段として使用される。

3.機能構造は人生の早期に形成され、時空の秩序と価値体系の層を維持する。この構造の生成は、生体細胞の生化学的化合物の合成と比較することができる。

4.代謝または情報の保存に必要なエネルギー、つまり、適切な刺激の受信、選択、統合、および意思決定の中心。

5.不要で取るに足りない情報が取り除かれる、放出の中心。


出典:http://www.wikisocion.net/en/index.php?title=Information_Metabolism

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