スキップしてメイン コンテンツに移動

MBTIとストレングスファインダーの違い


MBTIとストレングスファインダー(以下SF)は「自己理解」を目的として用いられることが多いが、両者の相関性はどうなっているのか?

①ギャラップ社のPhilip Stoneがハーバード大学の学生222名を対象とした調査

・Sは(Nと比較して)公平性、規律性、調和性を上位に持つ。
・Nは(Sと比較して)着想、内省、戦略性、信念、学習欲、収集、未来志向、ポジティブ、自己確信、指令性、社交性、コミュニケーション、運命思考、活発性を上位に持つ。
・J指向が明確な学生は達成欲、分析思考、規律性、公平性、目標志向、調和性、学習欲が上位にある。
・P指向が明確な学生は活発性、適応性、指令性、着想、自己確信、戦略性、社交性が上位にある。
・上記を除いて、MBTIとSFに相関性はない。

②コロラド州立大学のSchenckがキャリア・コンサルティングに関する授業を履修する大学院生164名を対象とした調査

・上位5つの資質にコミュニケーションと社交性を持つ学生は全員がE型だった。
・同様の結果は分析思考、自我とS型、分析思考とT型、規律性、自我とJ型にも見られた。
・E型に活発性、F型に共感性、J型に公平性が90~99%の確率で見られた。

ギャラップ社がこれ以外のデータを公開していないので、結論としては「一部を除きMBTIとSFに相関性はない」ということになるが、少し補足するとSFの資質分布は国によって違う。

日本のSF資質順位(対象:SFの受験者)

出典:https://www.le-chat-dort.net/japanese-many/134/

次に世界のSF資質順位(対象:SFの受験者)

出典:https://www.le-chat-dort.net/japanese-many/134/

①の調査で対象となったハーバード大学生の上位資質は
1.達成欲
2.競争性
3.親密性
4.最上志向
5.戦略性
となっており、アメリカ国民の上位資質とも一部異なる。また、

・資質には出やすい組み合わせ、出にくい組み合わせがある。
・再検査すると資質が変わることがある(ギャラップ社は神経可塑性の働きと説明している。再テストの信頼性は全体としては問題ないが、一部の数値は低い)。
・MBTIはどちらかの指標に分類されるが、SFは相反する資質を持ち合わせることがある。

などの要因を考え合わせると、局所的な結果だけでMBTIのタイプや心理機能とSFを結びつけることはできない。そもそも資質のイメージからMBTIを連想してしまうのは、類型と特性の違いを理解していないことに起因する。MBTIは類型論、SFは特性論である。以下、両者の違いについて公式マニュアルから要約する。

<MBTIとその他の性格検査の違い>
・MBTIは指向性を測定し、他の性格検査は指標を特性として測定する。
・例:NEO-PIで外向性の得点が高い人物は、得点が低い人物より「外向的」な特性を持っていると見なされる。同様に、外向性の得点が低い人物は外向性に欠けると見なされる。
MBTIが測定するのは対象者が「どの程度その指標を好むか」であり、対象者が「どの程度その特性を持っているか」ではない。
・ある指標は逆指標または別の指標を基準としても適切に説明されない。MBTIの内向型は「外向性の欠如」という意味ではない(逆も同様)。
・MBTIの結果は個人がどんな人物か説明するものではない。自己報告の結果であるタイプ描写について、回答者が最も正確な判断を下せるものと見なされる。

この件については公式HPでも詳しく説明されている。

ちなみに多くの人が利用している16 Personalitiesはビッグ5(特性論)を基にしたテストであり、MBTIではない。おそらくテストを受けて「当たってる!」→ネットで情報収集という流れが多いと思われるが、ネット上にある「○○タイプの特徴」「○○タイプの見分け方」などの大半は口からでまかせを言っているだけで、タイプとは何の関係もない。タイプよりもそういう所で、どういう人間かわかる。中には第三者から見て「典型的なINTP」もいるだろうが、INTPなら必ずそれらの特性を持っているわけではないし、それらの特性を持っていることがINTPの条件でもない。これはINTPだけでなく全てのタイプに言えることである。

ともかくこれを読んでいる人には、

・タイプは特性ではない。
・タイプは能力ではない。
・タイプは本人の主観によって決まる。

ということを理解した上で、ネットではなくまともな書籍から学んでもらいたい。

コメント

このブログの人気の投稿

MBTI:タイプの関係

日本では何故かソシオニクスしかタイプの関係を扱っていないことになっている(?)が、MBTIでもタイプの関係については言及されている。「タイプの関係(相性)」は誰でも思いつくテーマなので当然だが、MBTIの関係論については、あまり有名ではない。理論的にはそこまで緻密なものではないが、参考までに紹介する(メインで取り上げるカーシーについては この記事 を参照)。 初期のカーシーは、真逆のタイプ同士の相性が最も優れていると考えていた。人は自分にないものに惹かれる。つまり、INTPとESFJが互いに惹きつけ合う。ただ、その後の観察から、カーシーは考えを変えたらしい。多くの結婚生活を観察した結果、SJとSP、NFとNTの組み合わせが最も多いことがわかった。どちらの組み合わせも、コミュニケーションの好みは一致している一方、目標を達成する手段は異なる。例えば、SJとSPは共に具体的な対象について話すことを好むが、SJは協調して行動するのに対し、SPは実利を重視して行動する。逆の組み合わせ(SJとNF、SPとNT)では、この関係性は成立しない。このため、SとNの違いが重要とされる。 実はタイプの関係については、マイヤーズも言及している。375組の夫婦を調査したところ、夫婦の77%は二つ以上の指標が一致していた。特にSN指標が一致していることが、タイプを問わず重要だという。マイヤーズは異なるタイプ間の違いを理解するためにMBTIを作ったが、実際は自分に近いタイプを好むらしい。ユングによれば、人のシャドウによる行動は、その人物の行動と見なすべきではない。シャドウを額面通りに受け取らないことが、結婚生活を上手く送る秘訣になる。 話をカーシーに戻すと、彼の理論ではSN以外の指標が逆のカップルに、最も互換性がある。つまり、 ESTP x ISFJ 、 ESFP x I STJ 、 ESFJ x I STP 、 ESTJ x ISFP 、 ENTP x INFJ 、 ENFP x INTJ 、 ENFJ x INTP 、 ENTJ x INFP がベストカップルになる。以下に各々の気質ごとの関係性をまとめた。 <SP:職人> SPは異性と真剣な関係になりにくい。衝動的に人々に惹きつけられ、新たな関係を結ぶ。他の気質よりも外見に気を遣い、性的な経験にも積極的である。抽象的な刺激には心を動かさない

MBTIとソシオニクスの違い:心理機能と情報要素

前回 はJ/Pの違いについて触れたが、MBTIとソシオニクスは4指標の定義、心理機能(情報要素)の定義においても異なっている。以下はWorld Socionics Societyが挙げた両者の違いとなる。 ①各指標が意味するもの ・MBTIのI / Eは「人と関わってエネルギーを得るか」だが、ソシオニクスではFに依存する。外向T型は交流をあまり必要とせず、内向F型は人と関わることを好む。 ・MBTIのN / SはN型のみが創造力・発想力に富むというバイアスがかかっており、S型は過小評価されている。ソシオニクスでは両者が得意とする領域で公平に取り扱われる。 ・MBTIのT / Fは「厳しさ・優しさ」を表すが、ソシオニクスでは競争心・攻撃性・厳しさはSeに依存する。よってソシオニクスにおけるSe優勢タイプの多くが、MBTIではT型になる。ソシオニクスのFは親切心・寛大さではなく、対人能力を表す。よってSe-Fタイプは社会的に優位に立つためFを利用する。 ・MBTIのJ / Pは「組織力・計画性の有無」を表すが、ソシオニクスではTに依存する。よって多くのF型がMBTIでPと判定される。ソシオニクスの合理・非合理は物事が「どうであるべきか(T / F)」「どうであるか(N / S)」というアプローチの取り方に焦点を当てる。EIE(ENFj)やEII(INFj)は計画性に欠ける可能性があるが、「自分の感情は正しい」「他人はこのように感じるべきだ」という明確な見解を持つタイプとなる。 ※なお、わかりやすくするために特徴を挙げたが、詳細は各指標に関する記事で確認して欲しい。 ②MBTIの認知機能とソシオニクスのIE ・MBTIのSe(現在を生きる、快楽を求める、美的感覚)=ソシオニクスのSi ・MBTIのSi(記憶、歴史、比較、時間感覚)=ソシオニクスのNi ・MBTIのSi(ルールを守る)=ソシオニクスのTi ・MBTIのTi(物事の仕組みを解明する)=ソシオニクスのTe ・MBTIのTe(権威、指揮、上下関係)=ソシオニクスのSe ・MBTIのFi(感情の状態)=ソシオニクスのFe ・MBTIのFe(人間関係、社会的に適切な態度)=ソシオニクスのFi ※ソシオニクスについては「 情報要素 」を参照。 ③グループ分け ・MBTI

トライタイプ

<トライタイプとは> 1995年の調査で、人はひとつだけでなく、好ましい順番で使用される三つのエニアグラムタイプを持つことが示された。これらの各タイプは三つのセンター、ヘッド(567)、ハート(234)、ガッツ(891)に存在する。 三つのタイプのうち、支配的なタイプは自我の優先する防衛戦略を表す。しかし、支配的なタイプの戦略が失敗すると、自我は残り二つのタイプの戦略を順番に利用する。支配的なタイプは常に統制者であるため、最終的に核となる戦略に立ち戻る。 <調査方法> 初期の調査から明らかになったことは、質問票やコーチングの際にクライアントによって使用された語彙パターンが、一貫して三つのタイプを中心に自我の戦略を組織したことである。言い換えると、クライアントは個人的な心理経験をさらけ出す際に、三タイプの言語や語彙を利用した。 クライアントは支配的なタイプだけでなく、他の二タイプの核となる恐怖とも共感した。さらに重要なことに、多くの人々は支配的なタイプとラインやウイングで繋がっていないタイプの語を使用した。殆どの理論家は全ての言動が支配的なタイプ、ウイング、ラインに帰するものと考えていたが、クライアントは各センターにおけるタイプの語彙を何度も使用したため、これはトライタイプの発見において重要な特徴である。 語彙分類は質問票の単語選択を統計的に実証し、各タイプが母語、年齢、性別、教育、国籍や人種を問わず独自の語彙を使用するという仮説を確認するために使用される。さらに、支配的な本能型の言語と同様に、トライタイプを構成する3タイプの語彙を使用することも確認する。このため、タイピングは5つの段階を経る。1)質問票。2)エニアカードを用いたテスト。3)本能型のテスト。4)語彙分類。5)コーチング。 出典: https://www.katherinefauvre.com/tritype/ <ウイングとライン> 調査は人がウイングとライン(エニアグラム図で点同士を結ぶ線)を利用することを示したが、これらのウイングとラインは、個別に使用される戦略に留まらない。何故、メインタイプと関連のない根源的な恐怖、語彙、動機や望みが報告されたのか?トライタイプにウイングタイプや統合・退行ラインに沿ったタイプが含まれると、そのタイプが活用されることが極めて多い。 例えば、トライタイプに3と6を持つ